このブログでも、ちょくちょく出てくるポスドク問題。
ただ「博士を増やす」という目標だけで動いて、その先、その博士に何をやってもらうかまで考えていなかった、という失策の代表例のようになっています。
企業でのポスドク採用を促進しようと、文科省が採用一人につき500万円を支給する制度を導入するそうです。
『
ポスドク:1人採用で5百万円…文科省が企業に「持参金」』(毎日.jp)という記事から。
博士号取得後に任期付き研究員(ポスドク)として大学や公的研究機関で働く人たちの民間企業への就職を増やそうと、文部科学省が、ポスドクを採用した企業へ1人につき500万円を支給する。国策としてポスドクを増やしながら受け皿不足が指摘される中、「持参金」で企業側の採用意欲を高める狙い。文科省が企業対象の事業を実施するのは珍しく、09年度補正予算案に5億円を計上した。【西川拓】(後略)
ちょっと記事の表現が気になりますね。
「持参金」だ「食わず嫌い」だと、なんとなく小馬鹿にしているような印象を受けます。
記者の目には「間抜けなことをやっている」と映っているということの表れでしょうか。
それはともかく、国の事業ですので、どんな企業でも誰でもOKというわけではなく、ちゃんと博士をどのように活用していこうかというプランを審査した上で支給するようです。つまり、採択された企業の取り組みをモデルケースにして、ポスドク採用を広げていこうというねらいですね。
ただ、09年度の補正予算ということですので、今後続くかどうかわかりません。
支援事業が悪いわけではないのですが、それによって構造的な変化がなければ政策とは言えません。
モデルにしようにも、この1年では「成功事例」と言えるようなケースが出てくるでしょうか。
採択企業に対して「使い捨て」にならないように終了後のキャリア構想を求めるのと同様に、制度としても「払い捨て」にならないように終了後の構想が必要でしょう。
『
経産省がポスドクを民間企業へ派遣 について考える』でも書いたのですが、企業が博士号取得者を採用することを支援するよりも、「企業と大学が連携して、研究職社員に博士号を取得させるプログラム」を助成するというのはどうでしょうか。
現在のポスドク問題を解消することにはなりませんが、長期的に見れば、博士を企業で働かせるのではなく、企業で働く人に博士になってもらった方が、実効性があるのではないでしょうか。
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