先日、私大の定員割れ状況が改善されてきたという話題をとりあげました。
「
不況で地元大学人気、私大定員割れ改善について考える」
「定員割れ」を生み出す状況として、ついつい学生募集の段階で志願者が集まらないということを想定してしまいますが、実はもう1つ、入学した後に学生がやめてしまうために起こるということも考えられます。
中退そのものが悪いわけではありませんが、大学経営としては、安定的に見込めたはずの収入が消えることになりますので、深刻です。
「
中退:大学生、8人に1人 NPOが試算、「白書」発刊 ◇安易に決断、非正規雇用に/社会で対策必要」(毎日.jp)という記事から。
大学や専門学校など高等教育機関からの中退が深刻化している。NPO法人が調べたところ、大学生の8人に1人が中退していることが分かった。人間関係のつまずきなどから卒業資格を得られなくなり、社会に出て不安定雇用を余儀なくされる若者も後を絶たない。NPOは「中退を社会問題ととらえる時期にきている」と訴えている。【山崎友記子】(後略)
先日、このNPO法人が主催する、シンポジウムに出席してきました。
冒頭に書いたように、中退そのものが悪いわけではありません。
会場でも、そのことは話題に上がりました。
しかし、現状、中退者がそのままニート、フリーターになるケースが多く、それは、やり直しがきかない社会という大きな問題も背景にあるのですが、社会を変えるのは大仕事なので、それならば、まずは中退者を出さない対策、中退予防を考えようというのが、このNPOの立場です。
また、中退の理由として「経済的な問題」が挙げられることが多いのですが、実はよくよく中退者本人に聞き込んでいくと、それよりも、学習意欲の低下や人間関係の方が大きな要因だったりするとのこと。
「そもそも、義務教育じゃないんだから、学習意欲がなければこなくていい」といった言い方もできますが、そういう学生も入学してくるのが全入時代。
大学での取り組みも、そのような状況を踏まえたものになってきているかと思います。
例えば、以前は「学生相談室」と呼ばれていたものが、「学生支援センター」という形に変わってきています。
「相談室」だと、精神的な問題だったり経済的な問題であったり、特別な支援を必要とする事案のように思われます。
ただ、いま中退していくのは、ごくごく普通の学生です。だからこそ、大学での生活について、何でも相談できるという体制がとられているのでしょう。
また、問題が起きてからそれに対処する受け身の状態ではなく、問題を未然に防ぐ、あるいはその問題の芽さえ生じさせないような、積極的な取り組みもあります。
以前、紹介した「
新潟大 ダブルホーム制で学生の居場所作り について考える」などは、そういう取り組みと言えるでしょう。
よく、「面倒見のいい大学」という呼び方をしますが、就職支援や、あるいは少人数のゼミといったものが取り上げられることが多いようです。
もう少し別の視点で、学生の大学への適応支援といった見方もあるのではないでしょうか。
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